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伊藤宏一の“おカネと「美しく」つきあう方法”
<第2回:「組曲」のような資産運用とは?>
講師:伊藤宏一(千葉商科大学大学院教授)
皆さんはどんな組曲を聴きますか。組曲というとすぐに思い浮かぶのが、「くるみ割り人形」で、これはバレエのとっておきのメロディーを集めたものですが、音楽の歴史を少し調べてみると、原型はかなり違っています。
クラシック音楽の世界で古典組曲というと、バッハのフランス組曲やイギリス組曲があります。これら古典組曲では、異なった国の民衆の踊る舞曲の組合せを「組曲」と呼んでいました。最もベーシックには、ヤコブ・フローベルガーが確立したアルマンド・クーラント・サラバント・ジーグの組合せです。これは順にドイツ・フランス・スペイン(ラテン)・イギリスの舞曲の組合せなのです。厳かなアルマンドで始まり、楽しく軽快なクーラントに移り、しっとりとした情感のあるサラバントに浸り、そして早いテンポで動くジーグで終わるというのが、古典組曲のコアスタイルです。
組曲はイタリア語でパルティータと呼ばれていました。ですからバッハの無伴奏バイオリンのためのパルティータも組曲ですね。それからクープランは、組曲をオルドル、つまり「秩序」と呼びました。異なる色彩の四つのリズムとメロディーが一つのハーモニーという「秩序」を作るというわけです。
そしてこれにまた様々な舞曲が、色彩とリズム豊かに加わります。例えばフランスの気品ある踊りであるメヌエット、フランスの農民の楽しい踊りガボット、そしてパスピエ、ブーレ、リゴードン、シャコンヌ、パッサカリア、ポロネーズ、シシリエンヌ、パバーヌ、ミュゼット、ロンド、エール、またプレリュードも‥‥‥。
大切なのは組合せの要素であるそれぞれの舞曲の本質を深く理解すること、そしてそれらの上手な組合せのセンスです。
思うに、国境に接し国境を超えることが多いヨーロッパの生活の中で、こうした「組曲」文化が歴史的に熟成されてきたという感じを持ちます。一国主義の直情径行的センスからは生まれない「成熟した感性」だという気もします。
さてこの「組曲」の美学は、「成熟した投資」にも生かせるものではないだろうか、と思います。「国際分散投資」「国際バランス」というのは、投資対象の国際的な組合せですから、「資産の組曲」と呼ぶことができます。国内外の債券や株式あるいは不動産といった投資対象が、それぞれの個性的な色彩とリズムで運用のメロディーを奏でますが、それらを組合せる本質的な意味は、組合せによって新しい「秩序」つまり運用の質が生まれ、リスクが減って安定的なリターンが得られることでしょう。そこでは、古典組曲のようにしっとりとした深い情感がある運用がいいか、近代組曲のような華やかでダイナミックな色彩感のある運用がいいかは、好みの問題でしょう。皆さんはどんな「資産の組曲」を選ぶでしょうか。
ところで秋深くなってくると聞きたくなる組曲の一つにグリーグの『ホルベルグ組曲』があります。前奏曲・サラバンド・ガヴォット・アリア・リゴードンと、古典組曲のスタイルになっています。アリアを軸に、秋の夜長には絶品です。一度お聞きください。
伊藤宏一(いとうこういち)
千葉商科大学大学院教授。税理士、CFP®認定者・日本FP協会常務理事、株式会社ポラーノ・コンサルティング代表、税理士、ファイナンシャル・プランナーとして、企業・労働組合などでライフプランセミナー・個人相談を実施するかたわら、講演、金融機関などのセミナー、雑誌・新聞などの執筆、テレビ・ラジオなどに出演。
主な著書・論文に『ライフプランニングー理論と実例』(2007年セールス手帖社)、『金融商品なんでも百科』(平成20年度版 監修 金融広報中央委員会)、『独立投資家宣言』(共著日経BP社)、『なる本FP』新訂版(2009年7月 週間住宅新聞社)、など。
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