現代はキャリア形成の時代です。年功序列賃金の時代には、会社が研修をすべてしてくれ、自動的に収入が増えていきました。しかし現代では、自分で自己投資をして資格やスキルを身に付けながらキャリア形成し収入を増やしていかなければなりません。こうしたキャリア形成を一方でしながら、他方で資産形成もしていくために、どんなスマートな資産形成スタイルが求められているのでしょうか。
次の図をみてください。これは「資産形成のプラスサイクル」のイメージです。まず図の右側のキャッシュフローですが、収入が入ってきたら節約し、節約した分の一部を必ず自己投資に回します。そうすると、自分の体の中に眠っていた能力、たとえばコンピュータを使いこなせるとか、英語が話せるとか、資格を取れるといったナレッジやスキルが顕在化、現実化してきて、キャリアという人的資産ができます
(1)。そうすればそれを履歴書に書くことができ、それを企業が評価して収入が上がるというサイクルになります
(2)。収入が増えれば、一部を貯蓄や投資に回して
(3)、金融資産を増やしていくという戦略が取れます
(4)。つまり、人的資産を増やして、金融資産を増やすというプラスのサイクルを作るわけです。
さて今度は逆の「資産形成のマイナスサイクル」です。まず収入が入ってきたら、節約せずについつい浪費をしてしまいます。たとえば20代後半くらいで少し仕事が安定してくると、年1~2回の海外旅行やブランド品、ペットなどにお金を使いたくなります。ペットで犬を1匹飼うだけで300万円前後はかかるという試算もあるのです。自分に投資をしないと潜在的なスキルやナレッジは人的資産にならないので、そのままだんだんお金が足りなくなり、貯蓄が減少し
(1)、ローンを借りなければならなくなります
(2)。
プラスサイクルかマイナスサイクルか。現在はこの差が極めて大きくなっています。人的資産と金融資産を車の両輪として形成していくプラスサイクルをとることが、現代ではきわめて大切だと思います。
それでは金融資産固有の形成スタイルはどう考えればよいでしょうか。
かつての経済成長時代には、就職できれば年功序列賃金制度なので、人的資産は無リスク資産でした。実物資産はいわゆる「土地本位制」で右肩上がりにどんどん価値が上昇していきました。金融資産は無リスクの預貯金でも5~6%のリターンが得られたのです。つまり人的資産・金融資産・実物資産はどれもほとんど無リスクでミドルリターンを得られたので、お小遣い稼ぎのために、一部ハイリスク・ハイリターンの短期投機を行うことが可能であり、そこで失敗しても大勢に影響はありませんでした。
しかし成熟経済時代になると、成果主義賃金制度によって人的資産のリスクリターンの変動幅が拡大します。実物資産も、地価が場所によって大きく下がるところもあり、リスクが拡大しています。そして預貯金はまったくのローリターンです。こうした時代には、金融資産形成のスタイルはハイリスク・ハイリターンの短期売買ではなくて、ポートフォリオ運用でリスク分散しながら長期投資をしていくことが基本になります。
個別株投資を短期売買で行って金融資産を増やす方法は、時間とエネルギーがかかりすぎ、しかもリスクが極めて高いといえます。そして人的資産形成に時間とエネルギーを十分にさくことができなくなるので、現代的資産形成にふさわしい方法ではないし、あまりスマートでも、賢明でも、洗練されてもいないでしょう。
一方で仕事に打ち込み、自己投資でキャリア形成しながら、他方で分散の効いた長期投資を進めるためには、個別株の短期売買ではなくて、プロが運用するいい投資信託を上手に活用して累積投資をしていくことが、きわめて有効だと思います。