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伊藤宏一の“おカネと「美しく」つきあう方法” <第5回:地球環境保全のための投資―スターンレビュー>
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講師:伊藤宏一(千葉商科大学大学院教授) |
2006年10月30日に気候変動と経済に関する最も包括的なレビューがイギリスで発表されました。世界銀行の元チーフ・エコノミストで、現在は英国の経済担当特別顧問であるニコラス・スターン博士が、財務大臣から委託されてまとめた報告書です。
英国のブレア首相が2005年のG8サミットで初めて気候変動問題を取り上げ、2008年日本で開催されるG8サミットで、G8諸国や世界銀行などの国際機関が気候変動に関する検討結果をまとめて報告することになりました。イギリスは提案国として経済の視点から研究成果をまとめようということで2005年7月に英国政府と財務省がスターン博士に依頼し、それが今回の報告となったのです。
スターンレビューはサブタイトルを「気候変化の経済学」としています。従来型の経済学は「短期的、グローバル的、単一価値的」であるのに対して、気候変化は長期的であり、世界各国に分散して起こるものであり、意思決定主体も分散している、といった新しい特徴があり、これを経済学的に扱うものとなっています。
その主要なポイントは次の通りです。
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現在の状態が続く場合の気候変動のリスクとコストは、毎年世界全体のGDPの少なくとも5%に相当し、最大で20%もしくはそれ以上に達する可能性がある。気候変動はかつてない市場の失敗である。 |
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気候変動の最大の要因である温室効果ガスの排出量削減などの対応策を講じた場合の費用は、毎年世界全体のGDPの1%程度ですむだろう。 |
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この10年から20年における投資が、21世紀後半と22世紀の気候を大きく左右することになる。現在とこの先数十年の人間活動が経済と社会的行動に大混乱をもたらす可能性があり、そのスケールは2つの大戦及び20世紀前半の世界恐慌に匹敵する。 |
ここで重要なことは気候変動防止の行動は、新しい巨大な市場を生むと指摘している点です。
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世界が求められるスケールで行動を起こせば、低炭素技術の市場規模は2050年までに5千億ドルまたはそれ以上に達するだろう。 |
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豊かな国々の炭素市場は、低炭素開発をサポートすべく資金の流動を始めており、「クリーン開発メカニズム」もその一つである。 |
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世界各国は気候変動の回避をとるか経済成長と開発をとるかの二者択一を迫られる必要はない。エネルギー技術と経済構造における変化は、経済成長と温室効果ガス排出を切り離す契機をもたらした。 |
そして次が結論です。
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エネルギー効率性の改善、クリーンな電気・熱エネルギー・運輸技術の選択などで、温室効果ガスのレベルを450~550ppmCO2e(二酸化炭素排出相当量)の範囲内に抑えられなければならない。 |
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将来の国際的枠組には、排出量取引・技術協力体制・森林伐採を減らすための対応策・貧しい国の開発計画に気候変動を完全に取り込む適応策といった主要素が含まれなければならない。 |
ここから言えるのは、世界で最もすぐれた環境技術と環境適合商品を持つ日本や世界の企業を投資によって支援することが一つです。特に日本では、ハイブリット車などの環境対応車開発、植物性プラスチック開発、海中の植物性プランクトンに鉄粉をまくことによって二酸化炭素を固定化させる技術など、極めてすぐれた環境技術開発をしている企業が数多くあります。
また京都議定書に盛り込まれ、スターンレビューでも重視されている「クリーン開発メカニズム」も注目です。先進国が、削減義務の課されていない発展途上国や市場経済移行国で、省エネや温室効果ガス回収といった排出削減プロジェクトを実施し、削減できた量を排出権として獲得し、それを先進国の削減実績に組み入れる仕組みです。欧州では既に排出権取引の仕組みができていますが、日本はこれからです。しかしこれに取り組んでいる総合商社も出ています。
「環境保全のための美しい消費」に、新しいマーケットとして大きな可能性がある「環境保全のための美しい投資」を組み合わせることが、今日の私たちにとって、おカネと美しくつきあう最も重要な方法となってくるのではないかと思います。
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伊藤宏一(いとうこういち) |
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千葉商科大学大学院教授。税理士、CFP®認定者・日本FP協会常務理事、株式会社ポラーノ・コンサルティング代表、税理士、ファイナンシャル・プランナーとして、企業・労働組合などでライフプランセミナー・個人相談を実施するかたわら、講演、金融機関などのセミナー、雑誌・新聞などの執筆、テレビ・ラジオなどに出演。 主な著書・論文に『ライフプランニングー理論と実例』(2007年セールス手帖社)、『金融商品なんでも百科』(平成20年度版 監修 金融広報中央委員会)、『独立投資家宣言』(共著日経BP社)、『なる本FP』新訂版(2009年7月 週間住宅新聞社)、など。 |
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