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伊藤宏一の“おカネと「美しく」つきあう方法” <第6回:植物の成長から学ぶ長期投資スタイル―バイオミミクリ>
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講師:伊藤宏一(千葉商科大学大学院教授) |
春です。我が家では昨年11月に植えたチューリップの球根が、2月に芽を出し葉が成長し、やがて花が咲くようになってきました。寒い冬、枯れた庭にやがてチューリップがたくさん咲く姿を想像しながら、楽しく春が来るのを待っていました。そこでふと考えたのですが、もし、このように植物が成長するのと同じ感覚で投資を考えることができるとしたら、どうでしょうか。投資もゆったりと楽しくできるのではないでしょうか。
自然のモデルを学び、そのデザインやプロセスを真似て人間界の問題を解決する科学をバイオミミクリと呼んでいます。かつてレオナルド・ダ・ビンチは、トンボやハチが空中停止をする様子にヒントを得て、ヘリコプターの原理をスケッチしたと言われています。アワビは、合成接着剤を使わずに自由自在に壁に自らを吸着・剥離させることができます。カタツムリは、洗剤を使わずに自らの殻の汚れを落とすことができるし、セコイアは、数百ある根っこから、滑車や機械を使うことなく、太陽光のみで数トンの水を汲みあげることができます。アワビやカタツムリやセコイアに学べば、化石燃料を使わずに済むことができるので、そうした研究が行われています。
昨年の春先、私は庭に、ふうせんかずらの種を3つ撒きました。夏の終わりに見事に白い花を咲かせ、30の実をつけました。ふうせんかずらには、ふうせんの形をした1つの実に3個のハートの形をしたかわいい種が入っています。30個あるので、種は90個です。最初の3個の30倍です。3の4乗で81ですから、それ以上の複利の世界ということになります。これをそのまま、また春に撒きます。そうすると1年後には90個の30倍ですから、なんと2700個になります。これで10年経ったらどうなるでしょうか。
アインシュタインは「複利は人類の最大の発見」と言いましたが、バイオミミクリの視点で言えば、複利は、自然の中にある累乗の原理を数式化したということではないかと思います。
1202年、イタリアのピサの町に住む数学者フィボナッチは次の問題を考えました。
「オス、メス1つがいの親うさぎが、毎月1つがいの子うさぎを生む。子うさぎは1ヵ月すると親になり、2ヵ月目から毎月、子うさぎを生み続けるものとする。1ヵ月目には、生れたばかりの1つがいの子うさぎが居るものとすると、うさぎはどの様に増えていくのだろうか。」
答えは、1月ごとに1,1,2,3,5,8,13,21,34,55,89,…
となります。要するに前の2つの数を足していくということです。1+1=2,1+2=3,2+3=5,…
数をある規則のもとに順に並べたものを、数列といいますが、このような数列をフィボナッチ数列といいます。
植物の葉のつき方や、ひまわりの種や松かさも分析してみるとフィボナッチ数列がでてくると言われています。植物の成長は累乗の世界で図に示すと、らせん形になり、それを整数にするとフィボナッチ数列になると数学者は言っています。フィボナッチ数列も、前の数を足して成長しています。そして、兎の増え方から作った数列であるので、やはり成長に関係しています。
ここでは数学の原理だけに関心を向けるのではなく、植物や動物の一定の時間をかけた成長のイメージを、バイオミミクリ的にとらえて、投資元本の「成長」を一定の時間をかけた「長期運用」に生かすということが、ポイントではないかと思います。
植物には種を撒く時期と植物の成長時間があります。ふうせんかずらで言うと春というタイミングで種まきし春から夏への生長期間があって種か花が咲き、実がなるというわけです。その間はじっと待ち続ける忍耐力も必要ですし、今日撒いたから明日芽が出るといった「コンビニエンス」な話はないわけです。でもこの期間、風船の形をした実がたくさんなる様を創造しながら待つと楽しめます。成長するにはゆったりした時間が必要で、その時間を楽しむ心があるといいですね。長期投資もまさにこれと同じではないでしょうか。そして植物の成長と同じように投資元本の成長を考えていくというスタイルは、東アジア、なかんずく稲作に親しんでいる日本の私たちの感性にあっているのではないかと思います。
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伊藤宏一(いとうこういち) |
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千葉商科大学大学院教授。税理士、CFP®認定者・日本FP協会常務理事、株式会社ポラーノ・コンサルティング代表、税理士、ファイナンシャル・プランナーとして、企業・労働組合などでライフプランセミナー・個人相談を実施するかたわら、講演、金融機関などのセミナー、雑誌・新聞などの執筆、テレビ・ラジオなどに出演。 主な著書・論文に『ライフプランニングー理論と実例』(2007年セールス手帖社)、『金融商品なんでも百科』(平成20年度版 監修 金融広報中央委員会)、『独立投資家宣言』(共著日経BP社)、『なる本FP』新訂版(2009年7月 週間住宅新聞社)、など。 |
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