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伊藤宏一の“おカネと「美しく」つきあう方法”
<第10回:オリジナル・ポートフォリオの作り方 ―コア・サテライト戦略を生かす―>
講師:伊藤宏一(千葉商科大学大学院教授)
長期投資の一つのアプローチとして、企業年金が運用手法として取り入れている「コア・サテライト戦略」が個人の金融資産運用方法としても注目されています。これは守りながら自分の目標リターンを安定的に運用して達成することを目的とする「コア」部分と、積極的にリスクをとってリターンをめざす「サテライト部分」、この2つに役割を分けて金融資産を運用する方法です。
まず、金融資産の8割から9割をコア部分とします。これは老後資金などライフプラン上の長期的目的を実現するために目標リターンを決め、それを確実に達成するためにリスク分散しながら安定的に運用することを狙いとします。基本的には国内外の株式と債券に分散投資します。コア部分は市場リターン、別の言葉で言うとβをとるための運用です。ですから国内外の株式と債券のインデックス・ファンドでコストをおさえて運用するのが第一の選択肢です。この場合グローバル株式とグローバル債券については、為替ヘッジなしのタイプを選ぶのがいいでしょう。あるいはETFという選択肢もあります。
分散対象については、期待収益率を念頭におきますが、とりあえず単純な25%ずつの分散をイメージします。しかしリスク許容度やマーケットの動向によっては、株式のウエイトを多めにしたり、逆にしたりということもあります。ちなみに現在は株式のウエイトを多くする時期でしょう。また四つの資産のうち、国内債券については国際的にみても金利水準が低く、この先中長期的には金利上昇の可能性もあることを念頭に考えてみましょう。国内債券の代わりに分散対象として不動産を選択し安定性や分配を考えてリートファンドを入れるという選択肢もあります。グローバル株式については、米国株式の割合の多い従来型のインデックスだけにするか、EUの将来性を評価して欧州のインデックスをある程度組入れるか、といった点が一つのポイントです。また人によってはBRICsなどエマージング諸国全体に投資するファンドを一部組み入れるという考えもあるでしょう。こうして自分にあったオリジナル・ポートフォリオを作るのはおもしろいのではないでしょうか。しかしこうした組み合わせが、残念ながら「面倒だ」という人は、バランス型ファンドを使う方法もあるでしょう。
さて、金融資産の1割から2割をサテライト部分とします。これは市場リターンを上回る超過収益つまりαをとるための運用です。成長著しい中国やインド、ブラジル、ロシアといったエマージング諸国に投資するファンド、あるいはこれはという気に入った企業への個別株投資が考えられます。またコーポレート・ガバナンスがしっかりし、社会的責任を自覚し環境問題にも積極的に取り組んでいる企業を選んで投資するSRI(社会的責任投資ないし持続可能な責任ある投資)ファンドをサテライトと位置づけて組み入れるのもとてもいいと思います。
こうしたコア・サテライト戦略のメリットは次のような点にあります。
第一は一つファンドを購入した人が、そのファンドを生しつつ、次にどんなファンドを買うかの戦略を立てられることです。例えばグローバル債券ファンドを購入している人は、それを自分のコア・ポートフォリオコアの一部と位置づけて、残りの3資産に対応するファンドを購入してポートフォリオ作りをするというようにすればいいと思います。
第二に重複がないという点です。個別のファンドを中心にいいものを選んでいくと、中身の投資対象が同じということがあります。例えばパフォーマンスのいい日本株のアクティブファンドを2本持っており、中身を調べてみたら、どちらもA社とB社の株式が入っていた、とするとそれは重複です。それだったら始めからコア・ポートフォリオを念頭において重複のないように、かつコストも安くプランニングするのは合理的ではないでしょうか。
第三にリスクをとりすぎる失敗をしないことです。最近は中国株ファンドなどBRICs系のファンドのパフォーマンスがめだっています。これにこだわりすぎて、資金の大半を投入し過大なリスクをとりすぎるというケースがあると思います。これを回避するために、こうしたファンドはサテライトと位置づければ、大きな失敗におちいる可能性は少なくなります。
伊藤宏一(いとうこういち)
千葉商科大学大学院教授。税理士、CFP®認定者・日本FP協会常務理事、株式会社ポラーノ・コンサルティング代表、税理士、ファイナンシャル・プランナーとして、企業・労働組合などでライフプランセミナー・個人相談を実施するかたわら、講演、金融機関などのセミナー、雑誌・新聞などの執筆、テレビ・ラジオなどに出演。
主な著書・論文に『ライフプランニングー理論と実例』(2007年セールス手帖社)、『金融商品なんでも百科』(平成20年度版 監修 金融広報中央委員会)、『独立投資家宣言』(共著日経BP社)、『なる本FP』新訂版(2009年7月 週間住宅新聞社)、など。
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