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伊藤宏一の“おカネと「美しく」つきあう方法”
<第11回:SRIのバージョンアップ>
講師:伊藤宏一(千葉商科大学大学院教授)
SRIとは、ご存じのとおり、
社会的責任投資
(Socially Responsible Investment)のことで、一般的には、「企業への株式投資の際に、財務的分析に加えて、企業の環境対応や社会的活動などに対する価値評価、を加味して投資先企業を決定する投資手法」と理解されています。
米国では、もともと酒・タバコ・ギャンブルに関わる企業、武器製造に関わる企業などについて、宗教上・政治上の見解から投資しないというネガティブスクリーンからSRIは始まりました。そして次に、業種に関わらず社会的にすぐれた取り組みをしている企業を積極的に選んで投資するポジティブスクリーンが重視されるようになってきました。
またSRIは企業への株式投資だけでなく、債券投資やプロジェクトファイナンスへの融資、地域社会の健全な発展を目的としたコミュニティ投資、そして株主の立場から、経営陣との対話や議決権行使、株主議案の提出などを通じて企業に社会的な行動をとるよう働きかけるシェアホールダー・アクティビズムつまり株主行動も、含まれています。
そしてここ5年くらいは、ポジティブスクリーンの基準に、「企業の社会的責任(CSR=Corporate Social Responsibility)」を果たしているということが意識されるようになってきました。
そして地球環境問題が深刻化した今日、SRIは
持続可能な責任ある投資
(Sustainable and Responsible Investment)と再把握され、更に発展しようとしています。
ここで「持続可能な責任ある投資」とは、地球環境の持続可能性と人間の社会経済システムの持続可能性に責任を持つ投資という意味です。何よりもまず地球環境と社会経済システムの持続可能性の理念に優先順位をおき、ビジネスにおいてこの持続可能性を組み込む企業、つまり事業活動プロセスに環境や社会性、人権に対する配慮を組み込み、本業において環境・社会性に配慮した製品やサービスを提供する企業に投資することが、今日的なSRIのコンセプトになっています。そのためには化石燃料の使用と温室効果ガスの増大を土台にした「GNP的経済成長」ではなく、化石燃料の使用と温室効果ガスを大幅に削減し「持続可能な経済発展」を作り出し、生活の質と人間にとっての環境の安全性をサポートするための投資を行う必要があります。
こうしたコンセプトに従って銘柄選択もバージョンアップしています。例えばエコファンドでは、たんに地球環境保全のための寄付や植林をしたり環境教育を行っているだけでなく、極めてすぐれた環境技術を持っていたり、環境会計に基づく環境報告書やサステイナビリティ報告書を公表しているといった視点で銘柄選択が行われます。
この新しいSRIは、そうした点で、特定の宗教や政治的見解という視点に制限されていた初期のSRIからの大きな飛躍であり、地球で生活するすべての人々に受け入れることが可能なものとなっています。
米国ではすでに243本のSRIファンドがあり、純資産残高も日本円で合計、約263兆円 (公募投信以外に企業年金での運用やその他の投資を含む:2005年データ)となっており、ファンド数と純資産残高の両面で約50%がSRIファンドに特化した投信会社で占められています。ファンドの種類も豊富で、グロース、バリュースタイルの株式型、ハイブリッド型、インデックス型、海外投資型から債券型まであらゆるカテゴリーのSRIファンドがあります。そしてインデックスを上回る運用をしているファンドもたくさんあります。
日本のSRIファンド(個人が購入できる公募投信の残高)は、32本で約3,100億円(2007年4月現在)と、まだまだ初期段階ですが、パフォーマンスのいいものや、インデックス型も登場しています。またいい企業を選択し、その中でも割安な銘柄を選ぶバリュー型もあります。今後、新しいSRIの理念に基づいて多様なタイプのファンドが設定されるようになれば、多くの人から受け入れられるようになるのではないかと思います。
こうしたSRIファンドを自分のポートフォリオに組み込む場合は、前回お話したコア・サテライト戦略を前提にすれば、サテライトの一部に組み入れる方法が、とりあえず考えられるでしょう。そして人によってはコアに組み込むという選択肢もあると思います。持続可能性を追求するいい企業に投資して、しかもパフォーマンスがよく、コストも低廉であれば、SRIファンドは人気がもっと出てくるのではないかと思います。
伊藤宏一(いとうこういち)
千葉商科大学大学院教授。税理士、CFP®認定者・日本FP協会常務理事、株式会社ポラーノ・コンサルティング代表、税理士、ファイナンシャル・プランナーとして、企業・労働組合などでライフプランセミナー・個人相談を実施するかたわら、講演、金融機関などのセミナー、雑誌・新聞などの執筆、テレビ・ラジオなどに出演。
主な著書・論文に『ライフプランニングー理論と実例』(2007年セールス手帖社)、『金融商品なんでも百科』(平成20年度版 監修 金融広報中央委員会)、『独立投資家宣言』(共著日経BP社)、『なる本FP』新訂版(2009年7月 週間住宅新聞社)、など。
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