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島田知保の“自分流で選ぶ‘あんしん運用’のために”
<第3回:注目のテーマ投資と地球環境>
講師:島田知保 (月刊「投資信託事情」発行人・編集長)
7月7日は七夕。織姫と彦星の逢瀬を邪魔しないように…というわけでもありませんが、同日開催初日となる洞爺湖サミットにあわせて、ライトダウンが呼びかけられました。 'あんしん' 運用を進めていくには、暮らしの'あんしん'である環境も意識して、自分のお金の働き先を考えていきましょう。
投機マネーとあんしんマネー
パンが値上がりして、お米がよく売れるようになり、ふりかけや佃煮の売り上げが伸びているそうです。原油価格の上昇が原因で自家用車を使う機会をなるべく抑えているという人もでてきています。商品先物(コモディティ)価格を参照するまでもなく、日々の暮らしの中でインフレがじわじわと進んでいます。
資産運用に関心をお持ちの方なら、「資源・エネルギー」や「農業・食糧」が人気の投資テーマとなっていることをご存知の方も多いでしょう。コモディティに投資するファンドの残高が約1,400億円、資源・エネルギーや農業食糧に関連するテーマに投資するファンドの残高が約4,500億円となって(2008年5月末)、人気は高まっています。 2008年6月末の1年の収益率で見ても、コモディティ投信や資源・農業関連株投信が上位に並びます。そのほとんどは、運用3年未満。この期間が、まさにコモディティ価格が急上昇してきた時期にあたります。
この急上昇は実物需要の伸びだけではなく、世界中の投機マネーの動きによって増幅されていることを意識しておく必要があります。投機マネーは足の速い短期投資の視線で動く資金です。短期で大きく動くので、上昇時は目を見張る好成績となりますが、その裏返しとして、短期で大きく下落する可能性も秘めています。
しかし、資源・エネルギーや食糧などは、長い目で見て実需が伸びる可能性は非常に高いと言えます。長期の視点でこそ、価値ある投資対象となるのではないでしょうか。
こうしたテーマと上手に付き合うには、短期での大きな下落に耐えられる資金で、投機マネーとは異なる長期の視線を保って、あんしんマネーの運用の一部として位置づけるといいでしょう。特に、市場が調整した場合など、じっくり仕込んでいくことで、楽しみが増すはずです。
境界がおぼろになる流行テーマと環境問題
資源・エネルギーや農業・食糧のテーマは新興国の急成長と切っても切れない関係にあります。新興国の発展によって、需要が急激に拡大するというシナリオが根底にあるからです。投資テーマとして、人気の新興国投資と非常に近いテーマだと言えます。
では、新興国が成長してエネルギーや食糧を大量消費するようになると、何が起こるでしょうか?
地球環境への負荷が増大し、環境汚染や地球温暖化が更に深刻になる…と危惧されます。すると、その対応策として注目される成長分野がでてきます。たとえば、水の浄化・循環の技術や、代替エネルギー、その代表格と目される植物性エタノールの原料であるトウモロコシなどの農産物などです。こうした分野は、地球環境の改善に役立つ場合も多いので、環境関連投資の対象とオーバーラップします。
こうして、新興国の成長を背景としたテーマ投資(資源・エネルギー・食糧・水など)と環境関連投資が、ひとつの大きなシナリオの中にとけこんで、明確な区別がなくなってきています。
ひとつのファンドが、環境に配慮した投資であると同時に、環境をテーマとした成長株投資であり、環境面を考えなくても成長テーマの投資である、という多様な顔を持っています。
しかし、投資の軸に環境配慮を前提とする考え方と、環境産業が成長産業であるという考え方は、根本的に違う価値観に基づいています。ですから、エコで成長と二つの価値を同時に追求する場合であっても、まずどちらに軸足を置くのかを明確にしたファンドが投資家にとってわかりやすいと思います。もちろん、投資家も自分の軸足や価値をどこに置くのか、優先順位をつけておかないと、二兎、三兎を追って、結局何がしたかったのかわからなくなってしまいます。
進展する議論をいっしょに考える
技術が進歩し、経済が変化し、政治が動いていくように、地球環境に何がよくて何が悪いかという議論も、常に進展し深まっていくものです。例えば、注目の植物性エタノールについては、まだまだ賛否両論があり、科学的な検証も十分とは言えません。トウモロコシなどの食糧を無駄にしないための代わりになる原材料の研究も続いています。
また、生産性を上げる技術、たとえば遺伝子組み換えの技術によって生まれた新種が、生物の多様性や、摂取した人体、地球環境全体とどう関わるかなど、影響をたしかめるのに時間がかかる分野もあります。
エネルギーや技術、その結果としての製造物なども、消費する段階での環境負荷と、製造段階での環境負荷を総合的に検証する潮流が出てきて、昨日まで環境にやさしいと思われていたものが、実は環境を悪化させる要素が大きいとわかって、定説が覆ることもあります。
それらの変化に対してファンドがどのような判断で投資をしていくのか、それが自分の思っている投資なのか、そうでないのか…自分の考えが明確でないと、ファンドそのものを評価できません。
エコで成長株だと思ったのに、エコと言っても環境配慮ではなく環境=成長だったとか、成長株でエコだと思ったのに、環境を重視するあまり期待したほど成長性が追及できない、などということも結果として起こる可能性があります。
大切なのは、これが正解!と思い込むことなく、投資を行なうにあたっても、日々の生活を基盤にしてフレッシュな自分の目で見て、感じて、考えながら判断をしていくことではないでしょうか。地球という惑星の上で暮らす自分にとって何が大切なのか、それを知り、いつも意識していられる感性…それはお金を運用する時にも、判断基準として活かすことのできるステキな宝物だと思います。
島田知保(しまだちほ)
イボットソン・アソシエイツ・ジャパン株式会社 月刊「投資信託事情」発行人・編集長。東京生まれ。文部省宇宙科学研究所、衆議院議員公設秘書などを経て1995年より現職。創刊50年の投資信託専門誌「投資信託事情」は、愚直に経済・金融の社会的役割を追求する硬派な雑誌。投信関連調査、ソフト開発・開示資料・広報活動へのアドバイス、各種セミナー講師なども務める。 また、社会的責任投資(SRI)、責任投資原則(PRI)という考え方の普及に努めている。TBSテレビ「ブロードキャスター」コメンテーター、日経ラジオ「マーケット・トレンド」 ほか出演。岩波ブックレット「金融商品Q A」(共著)、教職員共済組合「共済だより」連載、ほか新聞、雑誌への執筆など。
この講座のほかの回を見る
第01回 ドタバタ時計と"あんしん"時計
第02回 下落局面でパニクるか、ルンルンか?
第03回 注目のテーマ投資と地球環境
第04回 投スパ投資家は偉い!かも?
第05回 下落ショックを抑える資産運用のツボ
第06回 思い立ったら、リバランス計画を立てる
第07回 目標を見据えて、一人でも続ける
第08回 適応力と本質を兼ね備えた視線を持つ
第09回 自分の弱点を知って、判断の偏りを克服しよう
第10回 積み立て投資で「時間」を味方につける
第11回 大恐慌時代に学ぶ資産作りの王道
第12回 'あんしん'と'幸せ'を育てよう
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