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島田知保の“自分流で選ぶ‘あんしん運用’のために”
<第7回:目標を見据えて、一人でも続ける>
講師:島田知保 (月刊「投資信託事情」発行人・編集長)
選挙より景気対策を!という国民の声は切実です。しかし、ここでも大切なのは将来への視線ではないでしょうか。目先の生活の保全もできればよいとは思いますが、将来の不安があっては、減税されようがお金を配られようが、安心して消費に回せるわけがありません。苦し紛れの場当たり的な対策ではなく、長い目で見た住みやすい国を作りたいですね。でも、どうやらお国を頼っていては、心基(こころもと)無い気がします。 一人ひとりが、自分で将来への備えをしていく必要がありそうです。
ショックの大きさはNG投資法の代償
株式市場の低迷と、円高。二つの波がマイナスに働いて、株式に投資しているファンドや、外貨建て資産に投資しているファンドの基準価額は軒並み下落しています。こうした資産を保有していらっしゃる方が、どこまで下がるのだろうかと、不安に思うのは当然のことでしょう。でも、どこまで、いつまで下がるのかは、誰にも予言できません。大切なのは、その漠然とした不安を抱えたままでいるのではなく、資産運用と切っても切れないリスクとして理解し、資金量・資産配分、そして最も重要な自分の気持ちを、自分自身でコントロールすることではないでしょうか。
実際、9月に世界が衝撃を受けたいわゆるリーマン・ショックですが、メディアが騒いだほどには、動揺していない投資家が多いのではないかと推察されます。大きなダメージを受けた方の多くは、レバレッジをかけた運用を短期で繰り返していたり、そもそもの投資資金が自分のリスク許容度を超えていた場合、あるいは投資対象を特定の投資対象や投資地域に絞り込んだ集中投資をしていた場合、そして一時に大きな資金で投資していた場合などです。特に、あまり投資経験が無いにもかかわらず、退職金を一時に投資に回した場合には、例え投資対象を分散していたとしても、1年間で30%以上の下落という局面は厳しいものでしょう。
つまり、今回のように滅多にない市場の下落は、NG(不適切な)投資法をしていればしているほど、受けるショックが大きいということです。逆に、投資対象や、投資地域、投資するタイミングをずらしながら、妥当な資金量で投資をしている場合には、今のようなマーケットの調整期でも、資産の下落を嘆くより、そもそも自分は何のために投資をしているのか、目標を見据えて初心に帰ることで"あんしん"スタンスをキープすることができます。どこかの国の政府のように場当たり的な対策を立てずに、自分が決めた目標に向かって、ブレることなく運用方針に従って継続していきましょう。そう、個別銘柄を選ぶという意味ではありませんが、自分の資産を管理していくという意味では、誰もがファンドマネージャーであると言えます。
ファンドマネージャーであるということは、気持ちをしっかり持つということです。下落時の不安によって極端に悲観的になったり、上昇時の多幸症につられて楽観的にならずに、なるべく平常心で資産と向き合うよう心がけましょう。
投資家のほとんどが萎縮している
メディアは「今」を追いかけます。この期に及んでも、「今投資するなら?」という企画が持ち込まれます。しかし、もうおわかりだと思いますが、万人向けの答えなどありません。メディアが欲しがっている答えは「円高だから海外資産、特に値下がりしている○○がおススメ」といった、分かりやすく、アピールしやすい回答でしょう。でも、そういう言い方は、集中投資を誘発しがちな、危険な匂いがします。
もし、投資しすぎていてものすごく不安なら、投資するより先に、損切もやむをえないかもしれません。リスクが許容できるなら、下がっているときに売らずにすみますから、投資資産をそのまま保持できます。また、前回取上げたように、資産価値の変動で当初の資産配分から大きくズレているなら、資産配分を戻すために調整(リバランス)することも必要ですし、投資に向けられる余裕資金がまだあるなら、現在保有していない資産や、少なめだと思う資産を買い増す絶好の機会でもあります。
9月までの追加型株式投資信託の残高(純資産)と、資金の流出入の動きを見てみましょう。
2006年9月、2007年9月と順調に資金は流入し続けてきました。しかし、サブプライムローン問題の発覚から新興市場の株式下落を経て、2008年1月には純資産額は落ち込み、資金流入の勢いも大幅にダウンしました。資金流入が減速したということは、投資家が「買い」に踏み切れなくなっているということです。それでも2008年4月の若干の流出を除くと、常に資金は流入しています。もちろん、これからが正念場であるとも言えるのですが、それでもまだ逃げる資金より投資に挑む資金の方が多いのです。これはメディアが伝えているほど、投資家が大きな動揺をしていない、つまり解約に走ったりはしていないと見ることができます。ただ、「買う決心」がつかずにいるのです。
しかし、長期で見ることのできる投資家は、それだけで、世間より一歩も二歩もリードできるのです。厳しい時期にスタイルを変えずに、じっくり運用を続けられます。世間が攻めに出られない時にも、自分の投資方針に従って、一人でも黙々と歩み続けるということです。積み立てやスポット買いも、今まで通り続けていけばいいのです。全体のムードが萎縮しているので、その方針が攻めに見えても、自分なりのスタイルを保っていくだけのことなのです。
逆に全体のムードが攻めに転じた場合には、同じ投資スタイルが保守的に見えてくるはずです。誰もが投資したがっている時には、同じことをしていても、きっと「守り」に見える、ということです。でも、変わるのは外部のムードであって、自分のリスク許容度や、投資スタンスではありません。そこをしっかり意識していれば、どんな時でも自分なりの'あんしん'スタイルを維持して、運用を続けることができるのではないでしょうか。
資産運用は外部との競争ではなく、自分の体力を見極めながら続けるジョギングや山登りのようなものです。景色を楽しみながら、ゆったりと続けていきましょう。
島田知保(しまだちほ)
イボットソン・アソシエイツ・ジャパン株式会社 月刊「投資信託事情」発行人・編集長。東京生まれ。文部省宇宙科学研究所、衆議院議員公設秘書などを経て1995年より現職。創刊50年の投資信託専門誌「投資信託事情」は、愚直に経済・金融の社会的役割を追求する硬派な雑誌。投信関連調査、ソフト開発・開示資料・広報活動へのアドバイス、各種セミナー講師なども務める。 また、社会的責任投資(SRI)、責任投資原則(PRI)という考え方の普及に努めている。TBSテレビ「ブロードキャスター」コメンテーター、日経ラジオ「マーケット・トレンド」 ほか出演。岩波ブックレット「金融商品Q A」(共著)、教職員共済組合「共済だより」連載、ほか新聞、雑誌への執筆など。
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第01回 ドタバタ時計と"あんしん"時計
第02回 下落局面でパニクるか、ルンルンか?
第03回 注目のテーマ投資と地球環境
第04回 投スパ投資家は偉い!かも?
第05回 下落ショックを抑える資産運用のツボ
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第08回 適応力と本質を兼ね備えた視線を持つ
第09回 自分の弱点を知って、判断の偏りを克服しよう
第10回 積み立て投資で「時間」を味方につける
第11回 大恐慌時代に学ぶ資産作りの王道
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