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島田知保の“自分流で選ぶ‘あんしん運用’のために”
<第9回:自分の弱点を知って、判断の偏りを克服しよう>
講師:島田知保 (月刊「投資信託事情」発行人・編集長)
年の初めは、今年の運勢を占う機会がいろいろあります。初詣でおみくじを引いたり、暦や血液型、星占いなどで占ったり…そう、投スパにも「キャラ診断」がありますね。占いの結果を心から信じているわけではなくても、例えばどこかに出かける直前に「○○座の人は、今日は無駄遣いに気をつけて」などとTVの占いコーナーの声が聞こえると、「そうか、気をつけよう」とちょっと気持ちを引き締めること、ありませんか?
もちろん、信じすぎて人生の大切なことを占いにばかり頼って決めたり、失敗を占いのせいにするのは、良い占いの活用法ではないでしょう。ただ、頭から馬鹿にして無視をするというのも、ちょっともったいない気がします。どの星や血液型の話でも、実は誰の中にもある様々な要素をかなり研究した結果の、歴史的な知恵や忠告がいっぱい含まれているように思うからです。
占いなどの効果は、何となく過ごしている毎日の中で、「怪我に気をつけよう」「自己主張ばかりでなく、相手の立場も考えよう」「怠けずに、気がついたことは自分からやろう」「余計な事は言わず、人の話をよく聞こう」「少し勇気を持ってチャレンジしよう」など、忘れがちなちょっとした「気持ちの持ちよう」を思い出させ、行動につなげてくれることではないでしょうか。
最後に笑う!長期の視線を忘れない
実は資産運用を考える上でも、クセやタイプというのがありそうです。大きく分けると、A)リスク大嫌いの引きこもり型、B)周囲に追従する金魚の○ン型、C)一攫千金を狙うイケイケ型、の3つのタイプになるでしょうか。人によって温度差があるので、A、B、C、のそれぞれの中間という型もあります。
又、多くの場合、周囲の状況によって同じ人がAに近い考え方になったり、Cに近い判断をしたりと、揺れ動くのではないかと思います。例えば、現在のように厳しい社会状況では多くの方がリスクを忌避してA型になりますが、一転市場が上昇を始めると知らない内にB型やC型になっている、といったことが起こりがちです。
そこで、自分が今どのようなタイプの考え方に近く、そのタイプは運用の判断を下す場合に、どんな方向に偏りやすいのかを知っておくと、その偏りを自分で意識して、もう一度少し距離を置いた冷静な考え方の方向から、軌道修正して判断を下すことができます。
もちろん、長年培った自分の個性や考え方を無理やり変える必要はありません。ただ、先の占いと同じように、自分では忘れがちな自分のクセやタイプを知っておけば、ちょっとした「気持ちの持ちよう」を思い出し、よりよい行動につなげていく"きっかけ"になるのではないでしょうか。
そこで、今陥りやすそうなA)リスク大嫌いの引きこもり型が陥りやすい"気持ち"と"考え方"の罠を取上げてみましょう。
まず、「損をすることを極端に嫌う」気持ちの偏りがあります。
中長期で資産を形成しようと思って運用を始めても、資産価値が下落した局面であまりにも不安になって、我慢できずに(下がっている値段で)資産を売却してしまうといった経験をした方に多い呪縛です。この経験を基準にして、「また損をするのは嫌だ」と思ったら、もう一度運用にチャレンジするのは困難でしょう。そして、ほとんど増えない預貯金に全てのお金を寝かせておくという、資産の引きこもり状態に陥ってしまいがちです。
あるいは、何かして「失敗をするのは嫌」、失敗するくらいなら「何もしない方がいい」という考え方の偏りがあります。この結果、とにかく現状維持、何もしない、という引きこもり状態になって、預貯金だけ、あるいは運用していても資産の現状も見ないし、リバランスも考えない、といった状態になってしまいます。
こうなってしまうと、ゆっくりと資産が育つ喜びを想像する心のゆとりを失って、価格が下落する局面、いわばより短い時間の悪い記憶を重要視してしまいます。同様に下がっているという局面に視線がひきずられ過ぎて、自分が投資した結果、「運用なんてしなければよかった」という後悔の気持ちや、「あの時売っていれば○○円収益があったのに」「預貯金にしておけば、今でも減らずに○○円あったのに」という現実には起こらなかったことを計算して、現実と比べて落胆しがちです。
しかし、しなかったこと、起きなかったことや、既に起きてしまったことを、現状と比較して嘆いても何も生まれません。まして、今、あるいはこれから「何もしないこと」の言い訳にするのは、怠慢ではないでしょうか。過去に起きたことは、気持ちを弱くしたり、揺れ動かして不安にするための素材ではありません。客観的なデータとしてこれからの判断の役に立てることが大切なのです。
資産価値の下落は、誰にとっても嬉しいものではありません。しかし、長い運用時間の中では、そのような局面も必ず訪れるものです。そのたびに、投資した価格より安く資産を換金していては、絶対に資産は増えないのは、言うまでもないことでしょう。
"幸せを育てる"お金を提供する
どんなタイプの方にとっても、しっかり分けておきたいのが、「ムードや気分」など感情的な気持ちと、「認識や思考」などの意識的に考えることとの違いです。そのどちらにも、環境や性格が影響して、判断を偏らせる弱点が潜んでいます。
感情的な弱点は折々に揺れ動き、判断がぶれる原因となります。また、考え方の弱点は、一見論理的であったり、客観的なように思えるので、もっとやっかいです。この弱点は、それぞれの方の個性によって、どちらかというと、いつも同じ方向に偏りがちです。
前述のケースでは、損や後悔をするのが嫌で判断や行動を避けるのは、感情的なものです。一方「売っていれば○○円収益があったのに」「やらなければ○○円あった」といったヴァーチャルな収益や損失にこだわるのは、考え方の偏りとしての悪いクセです。
特に現在のように大きく下げたショックを受けた直後は、この衝撃の大きさに、「長い目で市場を見る」常識を忘れて、最近の値動きに気持ちや考え方が引きずられてしまいます。やや長引きそうな調整の局面ですが、こうした時期にこそ、目先や近い過去のニュースばかりに目を奪われず、もっと長い目で市場の歴史や、私たちの暮らしの将来、新興国の未来像などを、自分なりに想像してみましょう。
自分のクセや偏りを自覚して、視線や考え方をなるべく「長期の常識」に引き戻してあげましょう。その上で、運用の判断を下す習慣を心がけていけば、長期ではかえって後悔しない資産作りができると思います。
私は、ちょっと寒くても夜空の下で、久しぶりに冬の星座などを見上げて、雄大な気持ちに自分を引き戻すこの頃です。
島田知保(しまだちほ)
イボットソン・アソシエイツ・ジャパン株式会社 月刊「投資信託事情」発行人・編集長。東京生まれ。文部省宇宙科学研究所、衆議院議員公設秘書などを経て1995年より現職。創刊50年の投資信託専門誌「投資信託事情」は、愚直に経済・金融の社会的役割を追求する硬派な雑誌。投信関連調査、ソフト開発・開示資料・広報活動へのアドバイス、各種セミナー講師なども務める。 また、社会的責任投資(SRI)、責任投資原則(PRI)という考え方の普及に努めている。TBSテレビ「ブロードキャスター」コメンテーター、日経ラジオ「マーケット・トレンド」 ほか出演。岩波ブックレット「金融商品Q A」(共著)、教職員共済組合「共済だより」連載、ほか新聞、雑誌への執筆など。
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第01回 ドタバタ時計と"あんしん"時計
第02回 下落局面でパニクるか、ルンルンか?
第03回 注目のテーマ投資と地球環境
第04回 投スパ投資家は偉い!かも?
第05回 下落ショックを抑える資産運用のツボ
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第07回 目標を見据えて、一人でも続ける
第08回 適応力と本質を兼ね備えた視線を持つ
第09回 自分の弱点を知って、判断の偏りを克服しよう
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第11回 大恐慌時代に学ぶ資産作りの王道
第12回 'あんしん'と'幸せ'を育てよう
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