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島田知保の“‘あんしん’投信活用法”
<第8回:自分流資産配分を考える>
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講師:島田知保 (月刊「投資信託事情」発行人・編集長) |
分散投資は「大儲けのチャンスを捨てても、大損するリスクを抑制して、投資結果を安定的にする」ことが目的です。しかし、そうは言っても、どのような資産にどれだけ分散するのが「自分流」なのかは、すぐに答えの出るものではありません。
「分散投資」が大切なのは解ったけれど、具体的にはどうすればいいの?という疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
多様な投資対象をコアに入れた場合
例えば、確定拠出年金(企業年金のうち、自分で投資対象を決めて毎月運用していくもの)では、投資対象として日本と主要国の株式・債券の4つの資産に1本で分散する「バランス型ファンド」がしばしば取り入れられています。
代表的なバランス型には、株式に投資する部分を資産全体の30%、50%、70%などと決めた3本のファンドから投資家が選択するタイプのものがあります。リスクが高くてもリターンを高めたければ株式に70%投資するものを、あまりリスクはとりたくないけれど、多少株式にも投資したい場合は株式に30%投資するものを選べば、基本的なポートフォリオが1本のファンドで作れるわけです。
いわばS、M、Lといったサイズから自分に最も近いサイズの洋服を選ぶのに似ています。投信スーパーセンターにも、様々なバランス型ファンドがあり、手軽な分散投資の道具となっています。
一方、投信スーパーセンターには、自分のポートフォリオを作るのに便利な、個別の投資対象に投資するファンドも多数あります。これを組み合わせて「自分流」のポートフォリオを組み立てていくこともできます。
多少の勉強と手間を厭わないなら、この方が中身が自分でわかり易く、管理しやすいというメリットがあります。
そこで、せっかく自分流の資産運用を考えてみようというのですから、もう一歩踏み込んで、実際に色々な資産配分で投資をした場合の、長期でのリスクとリターンの水準を比べて、参考にしてみましょう。

対象期間は1996年1月から2009年9月までとなっています。
様々な資産が、ITバブルや金融危機を経験した波瀾の期間であり、日本株のみは唯一マイナスのリターンという結果になっています。
しかし、コア・サテライト戦略(<第5回:資産構造にも「耐震性」を>参照)を前提とする分散投資では、リート、新興国、商品(コモディティ)などを投資対象に入れても、リスク・リターンの水準はグラフの小さな四角の中に納まっています。適度な分散であれば、リスク水準が大幅に上昇するわけではないのです。
この小さな四角の部分を拡大したのが、グラフの左上の部分です。
日本と世界の株式・債券に株式30%、株式50%、株式70%の割合で分散投資をした場合と、その4つの資産に世界リート、商品(コモディティ)、新興国株式、新興国債券を加えて分散投資した場合、そしてその8つの資産全てに分散投資をした場合をプロットしてあります。
大きなグラフではわかりにくかったそれぞれの組み合わせの結果を、拡大することではっきり見ていただけると思います。
ハイリスクな市場も‘こわくない’つきあい方
まず、基本4資産については、2008年末の市場の大きな下落局面が影響して、株式への投資比率が低いものほどリスクもリターンも高くなっています。
一方、他の資産を若干加えたポートフォリオの場合、リスク水準はほぼ株式50%と株式70%の間にありますが、リターンの水準は上昇しています。新興国や商品、リートが2008年の金融危機以前に相当程度上昇したこと、金融危機以降に先進国より新興国の方が早く、大きく市場が回復したことなどが主な要因です。
もし、これからも中長期で新興国の成長や、食糧・資源などの需要が伸びる可能性があると考えるならば、長期運用の投資対象の中に、新興国やコモディティを若干加えることは検討に値すると言えます。
ただし、短期では大きなマイナスが発生する可能性があることは、常に忘れないようにしましょう。
実は、グラフの分散投資のケースでは、これら主要資産以外の資産の投資割合は全て10%以下です。表にまとめましたが、主要4資産に25%ずつ均等投資をしたものをベースに、例えば新興国の株式、リート、商品(コモディティ)のうちひとつを加える場合は、先進国と日本の株式を5%ずつ減らして10%だけ投資をします。
新興国の債券の場合は、日本と先進国の債券の割合を5%ずつ減らして10%投資します。分散投資の中で最もリスクとリターンの高くなった新興国の株と債券両方に投資するポートフォリオは、主要4資産の株と債券全てを5%ずつ減らして、新興国の株と債券に10%ずつ投資し、8つの資産全てに投資するケースは、同様に主要4資産を5%ずつ減らして、それぞれの資産に5%ずつ分散しています。
| | 日本株式 | 海外株式 | 日本債券 | 海外債券 | 新興国債 | 新興国株 | 世界REIT | GSCI(商品) |
| ●4資産(株30) | 15 | 15 | 35 | 35 | - | - | - | - |
| ●4資産(株50) | 25 | 25 | 25 | 25 | - | - | - | - |
| ●4資産(株70) | 35 | 35 | 15 | 15 | - | - | - | - |
| ●4資産+新興国債券 | 25 | 25 | 20 | 20 | 10 | - | - | - |
| ●4資産+新興国債&株 | 20 | 20 | 20 | 20 | 10 | 10 | - | - |
| ●4資産+新興国株式 | 20 | 20 | 25 | 25 | - | 10 | - | - |
| ●4資産+世界REIT | 20 | 20 | 25 | 25 | - | - | 10 | - |
| ●4資産+商品 | 20 | 20 | 25 | 25 | - | - | - | 10 |
| ●8資産 | 20 | 20 | 20 | 20 | 5 | 5 | 5 | 5 |
ここで大切なことは、資産の10%程度を新興国やその他の資産にシフトするだけで、リスク・リターンの水準は「確かに変わる」と言うことです。それは「10%程度でも新興国など他の資産を持っていれば、一般的には期待されるリスク・リターン水準が若干上がって、長期では効率的な資産形成のエンジンとなる可能性がある」ということです。
また、「もし、30%、50%と新興国などの資産を持った場合には、投資比率に応じてどんどんリスク・リターンの水準が高くなっていき、リターンが大きくなる可能性もある反面、市場が悪くなった場合の傷も大きくなる」ということです。
コアの資産運用においては、新興国、コモディティなども、組み入れ方次第で決して‘こわい’投資対象ではありません。リスク水準が上昇することを認識した上で、適度に組み入れて活用する戦略を立て、その戦略を意識してポートフォリオを作っていけばよいのです。そうすれば「儲かりそう」という自分の気持ちをコントロールして、適度な資産配分を守ることができます。(もちろん、コアの運用とは別に余裕資金の範囲で、サテライトとしてこうした投資対象を楽しむのはかまわないと思います。)
もうひとつ、注意しておきたいことは、これらリスクの高い投資対象はどうしても「バブル的な値動き」をしがちな点です。誰もが「買いたい」「これは儲かるよ」という時期が時々やってきて大きく値を上げ、その後どっと下落するケースがあります。そうした時には、投資した部分の基準価額が下がり、自分のポートフォリオの中での投資比率も下がります。
ここが正念場です!このような時に、数回、数ヵ月に分けてしっかり投資比率を戻せる「資金」と「自分の運用に対する自信」を持てるようになるのが、ムリのない資産運用の経験を積んでいくことの最大の効果だと思います。
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島田知保(しまだちほ) |
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イボットソン・アソシエイツ・ジャパン株式会社 月刊「投資信託事情」発行人・編集長。東京生まれ。文部省宇宙科学研究所、衆議院議員公設秘書などを経て1995年より現職。創刊50年の投資信託専門誌「投資信託事情」は、愚直に経済・金融の社会的役割を追求する硬派な雑誌。投信関連調査、ソフト開発・開示資料・広報活動へのアドバイス、各種セミナー講師なども務める。 また、社会的責任投資(SRI)、責任投資原則(PRI)という考え方の普及に努めている。TBSテレビ「ブロードキャスター」コメンテーター、日経ラジオ「マーケット・トレンド」 ほか出演。岩波ブックレット「金融商品Q A」(共著)、教職員共済組合「共済だより」連載、ほか新聞、雑誌への執筆など。
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