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伊藤宏一の“パーソナルファイナンスの日本的方法”
<第2回:アメリカ人にライフプラン型FPのニーズ>
講師:伊藤宏一(千葉商科大学大学院教授)
この秋来日した米国のFPであるジェームズ・バーナッシュさんがウォール・ストリート・ジャーナルのFPに関する調査を紹介していました。それによると現在、米国人がFPに求めるもののトップ4は、次の4つとなっています。
第一位「顧客の利益を最優先して実務に取り組んでいること」96.1%
第二位「顧客のファイナンス状況と目標を理解してくれること」86.3%
第三位「顧客が必要とする時に速やかに対応してくれること」69.5%
第四位「顧客の考えを聞き、検討してくれること」66.0%
ここには驚くべきことに、一般的に米国で重要と考えられる「顧客の資産を最大化してくれること」は含まれていません。そしていずれも感情に関わる主観的要件であるところが最大の特徴です。
つまりFPに相談する人は、自分を理解してくれて自分のために尽くしてくれることを望んでいるのです。
「自分のことを理解してくれる」とはどういうことでしょうか。最近米国CFPボードが行ったFPに対する調査があります。それによると、FPが顧客のために行っている業務の四分の一は、ファイナンス以外のこととなっています。そのトップ3は何かというと、「個人的な人生の目標」(64%)「身体的健康」(52%)「仕事・キャリア・職業」(50%)です。そして依存症、離婚、メンタルヘルスも、うつ病、スピリチュアルなことなどについて相談する顧客が10%から20%いるとのことです。
ここからわかることは米国人がFPに望んでいるのは、自分と特別の親密な関係を結び、情緒的価値を共有し、精神的なサポーターになってほしいということです。
昨年のリーマン・ショックに到るまで、米国のFPの仕事は「投資アドバイザー」の面が主でした。FPは、顧客の金融資産残高を増やすことに力を注ぎ、その残高の一定割合を手数料として受け取るビジネスをしていました。
そうするとマーケットがいい時は、特にアドバイスすることもなく、FPは顧客の所に足を運んで親密に話を聞くということをする必要はなかったのです。ところが、2006年夏、米国の住宅価格がピークアウトし、その後サブプライム・ショックからリーマン・ショックに到るプロセスの中で、顧客の金融資産残高は3割から4割も激減すると、顧客は精神的不安に陥り、投資アドバイザーとしてのFPは収入が激減するという状況になっていったのです。
こうした中で、顧客は自分に寄り添って、自分の目標や希望を真に理解してくれるFPを求め出したのです。事実、先のCFPボードの調査では、FPが直面したコーチング・カウンセリング上の重大な出来事のトップ5は、「面接時に顧客が取り乱した(涙を流すなど)ことがある」「顧客からファイナンス以外のことを告げられ、これを知っているのはあなただけだと言われたことがある」「顧客にあなたのために祈るといったことがある」「夫婦間の仲裁役を務めたことがある」「親子間の仲裁役を務めたことがある」となっています。
そこで米国FPは、「投資アドバイザーからライフプランを重視する包括的なFPへの回帰」をするようになります。FPは、顧客とよく会って相談にのるようになり、顧客の情緒的価値や感情を重視してライフプランニングを行い、行動ファイナンスに基づいて認知面・感情面のバイアスを直すようにアドバイスし、収入も顧問料型になってきたのです。バーナッシュさんの言い方だとアドバイザーは今、「FPの本質に回帰する必要性」があるということになります。
この「ライフプランを重視し、顧客の感情と情緒的価値に寄り添う」という視点は、実は日本的発想と言えるものです。日本人の親が子どもと話すとき、子どもに向かって「おとうさんはね」「おかあさんはね」という言い方をし、「私は」とか「僕は」といった一人称の言い方はしません。「相手の立場に立って親密な関係から話す」という姿勢が日本人にはあります。
ここから日本のFPは、以前の米国FPとは異なって、より顧客の立場に立ったアドバイスに心掛けてきた経緯があるのです。米国のFPには過去、ライフプランの視点は希薄でした。
しかし今、この視点を重視するようになってきています。日本でも改めてこうした視点の重要性を再認識すべきだと思います。皆さんも実際、こうした視点でサポートしアドバイスしてくれる人を求めてはいないでしょうか。
伊藤宏一(いとうこういち)
千葉商科大学大学院教授。税理士、CFP®認定者・日本FP協会常務理事、株式会社ポラーノ・コンサルティング代表、税理士、ファイナンシャル・プランナーとして、企業・労働組合などでライフプランセミナー・個人相談を実施するかたわら、講演、金融機関などのセミナー、雑誌・新聞などの執筆、テレビ・ラジオなどに出演。
主な著書・論文に『ライフプランニングー理論と実例』(2007年セールス手帖社)、『金融商品なんでも百科』(平成20年度版 監修 金融広報中央委員会)、『独立投資家宣言』(共著日経BP社)、『なる本FP』新訂版(2009年7月 週間住宅新聞社)、など。
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第01回 東アジア半月孤と投資 -昆明から日本を見る-
第02回 アメリカ人にライフプラン型FPのニーズ
第03回 旧暦の知恵
第04回 禅の精神と自然エネルギー革命
第05回 老子と柔軟な投資スタイル
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