依然として物価が恒常的に下落するデフレ経済が続いています。2010年5月の消費者物価指数も対前年比1.2%の下落。消費者物価指数がマイナスの状況は、15ヵ月連続となっています。
中国やインドなどの新興国は、インフレ懸念が台頭しているのに、わが国においては物価が上昇する気配すら感じられません。
確かに「値上げ」という言葉を見聞きしないために、表面的には物価上昇の気配が漂っていませんが、地下においては物価上昇のマグマがフツフツと滞留し始めていることを見逃してはならないのです。
一般的に、物価の上昇や下落を判断するときには、企業間であれば企業物価指数、個人であれば消費者物価指数が用いられますが、物価を測る統計データには「輸入物価指数」もあるのです。
輸入物価指数は、厳密に言えば企業物価指数を構成する1つの指数で、輸入品が日本に入着する段階の価格(CIF)を調査した物価指数になります。CIFは「Cost Insurance Freight」の略称で、現地船積み価格に運賃、保険料を加えた価格です。
この輸入物価指数は、2009年12月からプラスに転じている、つまり輸入品の価格は既に上昇しているのです。同指数の2010年5月の速報値は対前
年比13.3%の上昇になっています。
輸入物価指数のプラスが半年以上も続いていることから、同年同月の企業物価指数も対前年比0.4%(速報値)の上昇と、ついにプラスに転じました。輸
入物価指数、企業物価指数がプラスに転じているということは、どこかの時点で私たちが購入するモノやサービスなどの価格に転嫁してくることが予想され
ます。
さらに、鳩山首相から菅首相に代わってからは、一転して消費税率アップが声高に言われていることも消費者物価指数の上昇材料となるのです。消費者物価指数は、私たちが購入するモノやサービスの価格の変動を現したものですが、消費者物価指数は消費税の増税=引き上げを反映させたうえで指数が作られているのです。
つまり、消費税率のアップは、消費者物価指数の上昇要因となるわけです。
水面上ではデフレ、デフレと騒いでいるものの、水面下において物価上昇のマグマが徐々に溜まっているのであれば、当然、物価の上昇に対応した資産運用をしなければなりません。
物価の上昇、いわゆるインフレに弱い資産の典型は預貯金や債券。これらの商品をインフレ対応型商品に変えるのであれば、物価連動国債をその候補に挙げてもよいはずです。
物価連動国債は、消費者物価指数に連動して額面金額が上下(定期的に見直される)する国債です。消費者物価指数がプラスになれば額面金額が増え、反対に、消費者物価指数がマイナスになれば額面金額が減少することになるのです。
残念ながら、個人投資家が物価連動国債を直接購入することはできませんが、投資信託を通じて物価連動国債を間接的に購入することはできるのです。数は少ないものの「物価連動国債ファンド」が設定されているので、将来の物価の上昇を睨むのであれば、物価の上昇に弱い預貯金や債券の一部を、物価連動国債ファンドに変えておくのも一つの手です。
ただし、物価が上昇したからと言っても、政府からデフレ脱却宣言が出されるとは限りません。2008年(平成20年)1年間の消費者物価指数は対前年比1.4%の上昇だったにもかかわらず、デフレ脱却宣言は出されていませんので。
(2010年6月28日執筆)