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日経平均株価の1万円台回復
2009年6月29日
日経平均株価が1万円台を回復した。昨年の10月以来、8ヶ月ぶりの1万円台である。一時期は7,000円を割り込む場面もあったが、その安値より50%近い値上がりとなっている。投資家としては「やれやれ」と少しは胸を撫で下ろすといったところであろう。株価が回復することによって「資産効果」といわれる効用が期待できる。資産効果とは、簡単に言えば、持っている資産が値上がりすることによって、余裕が生じ、財布の紐が緩み、消費が増えてくる、というものだ。日経平均株価が1万円台後半を推移していた2007年の頃と比べると差はあるだろうが、7,000円から50%近くも上昇し1万円台を回復したという事実は少なからず資産効果を生み出すであろう。
また、株式市場が回復してきたと言うことは、今後、日本経済も回復してくるという期待が高まる。なぜならば、「株式は経済を映す鑑」とか「株価の先見性」と言われ、現在の株式市場の動きが半年先の経済の先行きを現すといわれているからだ。しかも、そうした期待をしたくなる現象も散見できる。
それではどういった現象から景気回復の期待が膨らんでいるのであろうか。ひとつは、一部の企業の生産減少が下げ止まってきた、ということである。サブプライム問題に端を発し、米国の金融機関が破綻するなど、経済環境が悪化していく中で、企業の生産は急速に落ち込んでいった。しかも今まで経験したことのないスピードで減少していった。その減少がここにきて止まってきたのである。他にも、在庫整理が進み、製品によっては増産に転じるものも現れた。また、米国の株式市場は落ち着いた動きを見せているし、住宅関連などの経済指標も上向いてきている。そして、為替も商品市況も比較的落ち着いている。更に、新興国の株式市場は順調に回復してきているし、中国経済は大型の景気対策の効果もあり堅調さが窺える。こうした状況や環境を踏まえると、たしかに日本経済の回復に期待を寄せたくなる。現に、景気は上向いた、という発言も出始めている。
しかし、気になる点もある。ひとつは、どこの地点に立って景気が上向いていると言っているのか、ということである。日本経済はジェットコースターの一番上から落ちてきたようなものである。落ちる過程においては至るところで悲鳴が聞こえた。そして、一番底に到達した後、今度は上方に戻り始めた。たしかに、一番底から見るのであれば「景気は上向き」である。しかし、一番上から見ると「まだ戻ってきていない」ということになる。
次に気になるのは、景気が上向いたという話題はどれもこれも企業活動に関するものばかりであり個人に関するものはほとんど無い、ということである。むしろ、個人に関しては、未だ景気の底から脱していないと感じている人が大半であろう。
つまり、今回の日経平均株価の1万円台回復というのは、一番の底値の状態から一部の企業に回復の兆しが現れ、それが企業間に拡がることを期待し、ひいては個人の生活も回復に向かうのではないか、という思いを込めた回復なのである。
個人的には、株価の先見性などを勘案すれば、景気が回復していくチャンスにあると考えている。すなわち、日経平均株価が1万円を回復したことで安心するのではなく、ここから更に企業も政治も景気浮揚の努力を続けることが必要である。それには景気を見る視点ではなく、経営者が、政治家がどういう目線で景気拡大を実現させようとしているのか、が重要になってくる。最終的には個人が景気回復を感じられるようにならなくてはならない。これは、賃金、ボーナス、雇用を含めて生活の中で安心感が出てくることである。個人に安心感が戻ってくる、個人が景気回復を実感できる雰囲気が伝わると、日経平均株価は更に上を目指して上昇していくであろう。逆に、景気浮揚の努力を怠ったり目線を間違えると僕らを乗せたジェットコースターは次の底に向かって落ちていくのかもしれない。
経済評論家
川口 一晃
プロフィールとコラム一覧
ファンドマネージャーを経て、現在は経済評論家として活躍。
03年からはラジオ番組『ドットコムマネー塾』(ニッポン放送)のパーソナリティとしても人気を集める。著書は、『儲けるための株価チャート練習帳』(角川書店)ほか多数。
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本ページの掲載内容は、寄稿された執筆者の考え方や見方を紹介するものであり、当社が特定の金融商品や投資信託の個別銘柄を勧誘・推奨するものではありません。