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貿易立国の限界と投資立国・金融立国への歩み
昨年9月15日のリーマンショック以来、「需要が蒸発した」ともいわれる世界同時不況が襲い、資源価格も一時期の最高値から大きく下落しました。原油価格の指標であるニューヨークWTI先物価格も、昨年夏の最高値$147/バレルから一時は$32/バレルまで下落したものの、2009年6月に入り$65/バレルを超えて戻してきました。いまだ景気が底打ちして回復基調に入ったとはいえませんが、資源価格は、不況のどん底とはいえないような値動きを見せるようになっています。
こうした中で、私たち日本人の心を震撼させるような統計が発表されています。すでにご存知のことでしょうが、2008年度の日本の貿易収支は、▲7,253億円(貿易統計ベース)になり、1980年の第二次オイルショック以来28年ぶりに赤字に転落しました。戦後の復興期を経て世界第二位の経済大国に日本を押し上げた貿易立国(輸出立国)政策の限界が見えたのです。2005年に政府がまとめた「21世紀ビジョン」によると、日本が貿易赤字に転落する時期は2030年と予測されていました。大恐慌以来の出来事とはいっても、政府予測よりも22年も早く訪れた赤字転落は、突発的事態ではなく貿易立国政策の限界を示すトレンドとして受止める必要がありそうです。
通常、日本人は学校で、「資源のない日本は、世界中から輸入した原材料を工業製品に加工し、その輸出により稼いで国として生業を立てる貿易立国」と教育され、事実、その政策が大成功して現在の繁栄を築きました。しかし、21世紀に入ってBRICs経済が拡大し、先進国との間で資源の獲得競争が激化。その結果として資源価格の高騰が、2005年以降顕著になりました。一方、苦労して手に入れた原材料に高付加価値をつけて製造した自動車や液晶TV等の工業製品は、新興国製品との苛烈な価格競争のために値下がりが止まりません。赤字転落の根元は、時間の経過と共に「より高価な天然資源を輸入し、輸出する工業製品はより安価になる」ことにあり、景気が回復しても解消されるとはいえません。
実は、2005年の国際収支統計から、日本は貿易黒字よりも海外投資で稼ぐ所得収支(投資収支)の黒字が大きくなり、その差は年々拡大してきました。好むと好まざるとにかかわらず、日本は貿易立国から海外投資で稼ぐ投資立国や金融立国の道を歩み始めています。勿論、貿易立国の旗を降ろすわけには行かないので、貿易立国の他、投資立国、金融立国、観光立国、環境技術立国等の政策を総動員しないと国力の維持が難しくなります。そして、私たち一人一人が身の丈に合った資産運用に真剣に取組むことが、これらの歩みを確実なものにする一助となることでしょう。
(注)国際収支状況の貿易収支が1兆1,704億円と黒字なのは、貿易統計ベースとの間で運賃と保険料の集計が異なることが原因です。
国際収支状況
(単位:億円、%)
| 項 目 |
平成20年度 |
平成19年度 |
対前年度比増減 |
| 貿易・サービス収支 |
-10,025 |
90,902 |
-100,927 |
| (対前年度比) |
(―) |
(11.0) |
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| 貿易収支 |
11,704 |
116,861 |
-105,157 |
| (対前年度比) |
(-90.0) |
(11.5) |
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| 輸 出 |
677,249 |
809,446 |
-132,196 |
| (対前年度比) |
(-16.3) |
(9.9) |
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| 輸 入 |
665,545 |
692,584 |
-27,039 |
| (対前年度比) |
(-3.9) |
(9.6) |
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| サービス収支 |
-21,729 |
-25,960 |
4,231 |
| 所得収支 |
145,593 |
167,544 |
-21,951 |
| 経常移転収支 |
-13,277 |
-13,002 |
-275 |
| 経常収支 |
122,291 |
245,444 |
-123,152 |
| (対前年度比) |
(-50.2) |
(16.0) |
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出所:財務省 平成20年度国際収支状況
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株式会社FPインテリジェンス 代表取締役/CFP®/税理士
白根 壽晴
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| 1954年東京都生まれ。77年早稲田大学法学部を卒業後、住友電気工業㈱を経て83年に税理士登録。資産運用アドバイスに強いファイナンシャルプランナーとして定評がある。「定年後のお金 全疑問45」(東京書籍)や「会社にも自分にももっとお金を残す本」(かんき出版)など著書も多数出版。全国の大学、金融機関などで分かり易い講演を行なっている。現在、日本ファイナンシャルプランナーズ協会専務理事としてマネー教育の普及にも努めている。 |
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本ページの掲載内容は、寄稿された執筆者の考え方や見方を紹介するものであり、当社が特定の金融商品や投資信託の個別銘柄を勧誘・推奨するものではありません。 |
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